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世界観が広がった ユ・ジテ監督『招待Invitation』舞台挨拶レポ [韓国俳優取材REPORT]


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こんにちは 上野まり子です。

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先日ご案内した「ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2009」、世界中から厳選されたショートフィルムが一同に会する米国アカデミー公認の映画祭だ。恒例の秋の特別上映会「FOCUS ON ASIA(フォーカス・オン・アジア)」が10月22日から25日まで東京都写真美術館にて開催された。Aプログラムには韓国の俳優ユ・ジテ氏の監督作品が出品された。ユ・ジテ氏は東京国際映画祭の審査員として来日中だったが、自身の映画が上映されるとあって10月24日急遽舞台挨拶に立った。
この度の「FOCUS ON ASIA(フォーカス・オン・アジア)」」で上映されたユ・ジテ氏の作品は「招待(Invitation)」。退屈な人生を送る男と、キャリアウーマンだがそんな生活から抜け出したいと願う女。「非コミュニケーション」化した現代社会を描いた作品でクリス・マルケル監督の映画『ラ・ジュテ』へのオマージュとして制作された。
主演は俳優でもあるユ・ジテと『ノートに眠った願いごと』以来の再共演となったオム・ジウォン。スチール写真を連続し映像化したものでファッション誌のようなクールでスタイリッシュな印象を持った作品だ。その事はその後行われた舞台挨拶の際の質疑応答で明らかになった。
直前の告知にもかかわらずユ・ジテ氏のファンも駆けつけた会場。もちろん「ショートショートフィルム」の熱心なファンも来場している。

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上映後、会場後方から登場したユ・ジテ氏は大きな歓声と拍手に迎えられた。
まずは映画祭の審査員の経歴が紹介された。それによると今回の東京国際映画祭は長編作品の審査員としては韓国国内のものに次いで2度目の経験で、短編の審査員ではフランスの「クレルモンフェラン国際短篇映画祭」、「釜山国際映画祭短編部門」、そしてこの「ショートショートフィルムフェスティバル」では一昨年に審査員を務めている。この度の滞在は1週間ほどの予定で、その後帰国し「アシアナ短編映画祭」に行く予定だと紹介された。
他人の作品の審査をする心境について、映画を観るだけでも光栄なことだが、映画を愛する人との出会いがあるから審査員を引き受けている。本来は人が人を評価するのと同じように映画を評価することは良くないことだと思うとした上で、審査することは大変な事だと実感を込めた言葉だ。

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Q:映画を作ろうと思ったきっかけは?
A:小さい頃に俳優になろうとは思っていなかった。大学に入学し、先輩が短編映画を作っている姿を見たり、作品を観ているうちに少しずつ目を向けるようになった。
Q:作品が徐々に短くなっている訳は?
A:短編の一応の基準は20分から40分だ。大学時代、映画祭に出展するために作品を作っている人、習作を作っている人達が枠にとらわれて制作していることに疑問を感じていた。その為最初の作品はその枠を外し42分とした。次作も41分としたが短編映画祭で上映するチャンスを逸した。そこで第3作目は23分という規格内とした。4作目は意図せずに制作することとなった。
第1作『自転車少年』はクレルモンフェラン国際短篇映画祭に招待されたが、実は40分と偽って出品したが良い評価を受けた。それを期にロジャー・ゴーインが審査員に推奨してくれた。彼が<嘘も方便>と言ってくれたとエピソードも紹介した。
なお、参考のため彼の作品の上映時間を紹介しておこう。
ユ・ジテ短編作品
1作目『自転車少年』(42分)、第2作目『盲人はどんな夢を見るのでしょうか』(41分)、第3作目『我知らず』(23分)、『招待 Invitation』(10分弱)

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Q:『招待Invitation』制作のきっかけは?
A:韓国のファッション誌『BAZAAR』の8ページのグラビア写真の演出をというオファーだった。この様な試みはイ・ミョンセ監督もしていた。1ページ=1シーン=1CUTで繋いでいこうと構想した。その為シナリオを書いてみたがグラビアだけではもったいないと考え、写真映画にしてみようと思った。その様に段々と話が広がっていった。クリス・マルケル監督の『ラ・ジュテ』(’62)も同じような作品でその技術を借りて作品とした。
Q:制作期間は
A:シナリオに3日、自身の撮りためた物と13年来の知人のファッションカメラマンに撮影を依頼し2日間、編集などのポストプロダクションに15日かけた。
最初は雑誌のための8カットだけだったが、短編映画ということで102カットの撮影を主張した。
(あまりの大変さに「BAZAAR」の編集の人たちはその後挨拶もしてくれないと冗談とも言えぬエピソードを紹介した。)
Q:作品の一貫したテーマについて
A:映画は人生を生きる姿を代弁するものだと思う。自分の映画の中の共通したモチーフは自身の世界観だ。どの作品にも自分の世界観がところどころに配置されている。また映画は作るスタイルやジャンルに合わせ変えていくべきだと考えている。プロなら同じスタイルに拘らず、どんなジャンルにも挑戦すべきだ。

スタンリー・キューブリック監督の作品を引き合いに出し10数作品のどれも同じようなものはない。彼のように監督としてはどれも違う作品を作って行きたいとユ・ジテ監督。

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会場からの質疑応答
Q:今後、長編を制作する予定は?
A:すでにシナリオが出来ており、手直しをしている段階だ。人の成長がテーマとなっている。監督としてだが、自分が出演するとしたらカメオ出演程度になるだろう。俳優としては商業映画に出ているので、監督としてはインディペンデントの方に回りたい。例えばジャン・カサヴェティス監督や日本の鈴木清順監督、是枝裕和監督のような監督になりたい。
Q:映画人としての自身の成長について
A:第1作目の『自転車少年』は出演した少年達の目の高さに合わせて制作した。基準を彼らの目の高さにあわせることが重要だった。この作品が成功しなければ今後の監督作品はないだろうと思って制作した。今回の『招待Invitation』は出発点が商業雑誌だったため起用も商業的なキャスティングとなった。それならと自分も出演することにした。それは予算面を考えてのことだった。友人であるオム・ジウォンさんに出演してもらった他、多くの友人に手助けしてもらった。ファッション誌なので当然スタイリッシュになっている。自身の変化については年を重ねて世界観が広くなったようだ。特にこの度の東京国際映画祭の審査員は世界的巨匠の監督や編集者の方達とご一緒出来たことは自身の中でまた新しい考えが芽生えたと思う。そのような経験を通して広い世界を見る目を養った感じだ。一日一日が成長の糧だ。この様な経験を積むことで世界観がより大きく成長するだろう。

最後のメッセージ
現在、制作したい短編がある。それを作りまた皆様とお会いしたい。先輩やご覧の皆様からも学ぶことが多い、これからも期待し応援をしていただきたい。ありがとうございます。

こうして多くのファンに送られて退場となったユ・ジテ氏、短い時間だったがユ・ジテ氏の映画にかける思いを聞くことが出来るというまたとないチャンスとなった。ファンの心にも素敵な思い出となった事だろう。

【今日の一言】
第53回カンヌ国際映画祭において、出演した『オールドボーイ』が審査員特別グランプリを受賞したことで一気に注目を浴びることになったユ・ジテ氏だが『春の日は過ぎ行く』や『南極日記』、『美しき野獣』、『黄真伊(ファンジニ)』等など多くの映画作品に出演し、その役柄も多様だ。そしてその才能は俳優だけに留まるものではなく、監督という世界にも及ぶ。その柔和な顔も俳優の時と監督の時ではまったく違う印象を受ける。今年は『スターの恋人』でドラマへの出演を果したユ・ジテ氏、今後は監督としてますます活躍することだろう。いや、そう願いたい。なお今回私はAプログラムを拝見したが、同映画祭ジャパン部門優秀賞を獲得した『ハーフケニス/Half Kanneth』は短編としては少し長い作品だと思うが、その完成度の高さに、この作品の落合賢監督の次回作が長編であることを期待する。

 『 招待/Invitation 』

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(Yoo Ji-tae/9:50/韓国/ドラマ)
 

当サイト内ユ・ジテ氏関連記事
■ショートショートフィルムフェティバル
http://uenomariko.blog.so-net.ne.jp/2009-10-19
■映画『黄真伊』
http://uenomariko.blog.so-net.ne.jp/2008-09-24

 

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コメント 2

ayasolo

はじめまして、
ユ・ジテさん素晴らしい俳優さん(監督さん)ですね。
大好きです。
by ayasolo (2009-12-10 12:55) 

上野まり子

ayasolo様

ご訪問ありがとうございます。
ユ・ジテ氏は俳優、監督と
その才能も多彩ですね。
今後長編も予定しているようですので
期待いたしましょう。
またお越しください。
by 上野まり子 (2009-12-10 18:22) 

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